平成14年6月下旬から10月にかけて、全国の農業水路、ため池などにおいて、魚やカエルの生息調査を実施し、その結果がまとまりました。
 本調査は、農林水産省と環境省とが連携し、平成13年度から実施しているもので、本年度が2年目となります。

●今年度の調査の特徴
 
1. 環境教育や環境保全活動として本調査に参加した、小学校やこどもエコクラブ、田んぼの学校などの団体数は、昨年度の3団体から49団体に増加し、地域の方々との連携が広がってきています。
2. 昨年度の「一般調査」に加え、今年度は定置網を用いるなど、より調査精度を上げた「基幹調査」を実施しました。
 

主な調査結果
1. 全国約2500地点(昨年度は約1100地点)において調査を実施しました。(魚類とカエル調査地点の延べ地点数であり、重複する地点もあります。)
2. 本州に生息するカエル17種のうち、11種のカエルが本調査の実施により、農業水路周辺で確認されました。
3. メダカは、全国169地点で確認されました。
本調査の実施により既に自然環境保全基礎調査で確認されているメダカの分布691メッシュの他に、88メッシュ(H13 45メッシュ+H14 43メッシュ)で新たにメダカの生息が確認されました。
4. 希少種では、ニッポンバラタナゴ(絶滅危惧TA類)、ダルマガエル(絶滅危惧U類)など10種が確認されました。
5. 国外移入種では、カラドジョウ、ウシガエルなど10種が確認されました。

今後の方向性
 連携調査を継続し、水田周辺の生物生息状況や環境を明らかにしつつ、より良い施設整備に生かしていくこととしています。また、地域の方々との連携をさらに進めます。

 
≪目次≫  
1.調査目的 5.調査期間
2.環境省との連携 6.調査結果
3.調査対象と調査箇所数 7.調査結果の分析
4.調査機関 8.今後の展開方向
 
1.調査目的
 改正土地改良法を踏まえて、農業農村整備事業の内容を、環境との調和に配慮した、自然と共生する田園環境創造型に転換するにあたり、水田周辺水域の生態系の現状を把握するため、全国の農業水路、ため池において、平成13年度から環境省と連携して生物生息調査を実施しています。
 
2.環境省との連携
環境省から、調査分析手法への助言・提案等
環境省の自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)との情報交換(情報の補完)
▲目次
3.調査対象と調査箇所数
調査対象種:魚類・カエル
 調査地区:335地区
 魚調査1850地点、カエル調査697地点。

魚類とカエルの調査地点は重複する場合があります。
昨年度から行っている「一般調査」に加え、本年度から定置網を用いるなど、より調査の精度を上げた「基幹調査」も始めました。
 
 
4.調査機関
(1) 実施機関(基幹調査を実施)
地方農政局:国営事業所、土地改良調査管理事務所
北海道開発局、沖縄総合事務局、水資源開発公団・・・計97出先機関
(2) 協力機関(一般調査を実施)
都道府県、市町村、土地改良区及び県土地改良事業団体連合会、小学校・こどもエコクラブ・田んぼの学校・・・計118団体
本年度の調査に協力していただいた小学校・こどもエコクラブ・田んぼの学校等の団体数は、昨年度の3団体から49団体に増加しました。
 
 
5.調査期間
H14年6月中旬〜10月下旬
 
▲目次  
6.調査結果
(1) 結果概要
  確認された魚種:22科79種(我が国に生息する淡水魚は、亜種を含み約300種)
  確認されたカエル:4科12種(我が国に生息するカエルは、亜種を含み42種)
   
  多く確認された魚種
    ドジョウ
メダカ
タモロコ
モツゴ
カワムツ
142地区308地点(36都道府県)
102地区169地点(32道県)
67地区149地点(27道府県)
70地区135地点(29道府県)
70地区124地点(26都府県)
  多く確認されたカエル
    アマガエル
トノサマガエル
ヌマガエル
132地区214地点(40道府県)
86地区175地点(30府県)
83地区173地点(26府県)
(2) 希少種
  魚では、ニッポンバラタナゴ(絶滅危惧TA類)、ホトケドジョウ(絶滅危惧TB類)やメダカ(絶滅危惧U類)など9種、カエルではダルマガエル(絶滅危惧U類)1種、合計10種の希少種が確認されました。(希少種:環境省が作成したレッドリストに挙げられている生物)
(3) 移入種
  国外移入種
魚類ではオオクチバス、ブルーギル等の9種、両生類ではウシガエル1種が確認されました 。
  新たに分布が確認された種(環境省調査との比較)
近年、関東地方に侵入してきたヌマガエルが、同地方の埼玉県、群馬県で確認されました。
北海道に生息するフクドジョウが、福島県で確認されました。
宮城県、栃木県、茨城県、埼玉県、静岡県で国外移入種のカラドジョウが確認されました。
(移入種:過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種)
   
 
▲目次
7.調査結果の分析
魚類については、我が国に生息する淡水魚約300種のうち、79種(26%)が確認され、カエルは、わが国に生息するカエル種42種のうち、12種(29%)が確認されました。農業水路などの水域は、これらの生物の生息に大きな役割を果たしていると考えられます。
(本州に生息するカエル17種のうち、11種(65%)が本調査で確認されています。)
   
中でも多く確認された種は、魚類では、ドジョウ、メダカ、タモロコ、モツゴ、カワムツで、カエルでは、アマガエル、トノサマガエル、ヌマガエルでした。いずれも、昔から水田の周りによくいると言われている種が含まれており、これらの生物が多く生息していることが確認されました。
   
ドジョウとメダカは、より水田に近い小用水路や小排水路で多く見られました。両種ともに、一般的には水田とその周辺の水路を移動して生活していると言われており、本調査の結果は、そのことを改めて確認したことになります。
また、カワムツは取水口に近い幹線用水路に多く見られました。本種は、河川の上〜中流域に多く生息している魚です。そのため本調査の結果では、河川から取水口を通じて幹線用水路内に流入したカワムツが多いことを示していると思われます。
 
   
水路の流速(表面流速)と確認された魚類の上位5種との関係を見ると、メダカとタモロコ、モツゴは比較的流速の遅い水路で多く確認されました。カワムツとドジョウは、流速の速い水路と遅い水路の両方で確認されました。
 
   
ヌマガエルは、東海、北陸地方以西の水田周辺でみられ、特に九州、沖縄地方において多く確認されました。トノサマガエルは、中国地方の水田周辺で多く確認されました。また、アマガエルは、全国いずれの地方においても確認されていますが、特に東北地方で多く確認されました。
 
   
メダカを例にして、環境省の自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)との情報交換を行いました。本調査でメダカが確認された32道県(102地区169地点)を、自然環境保全基礎調査のメダカの分布情報(約10km四方の2次メッシュ)と重ね合わせると、124メッシュの生息分布となります。これにより、自然環境保全基礎調査で確認されている691メッシュ及び、平成13年度の45メッシュに加えて、今回新たに43メッシュでメダカの生息が確認されたことになります。
本調査により、自然環境保全基礎調査を補完する有効なデータを収集することが出来ました。
 
▲目次
8.今後の展開方向
来年度以降も環境省との連携を図り、継続的に生物調査を実施します。
この調査結果をもとに、水田周辺水域の魚類やカエルを主体とした生物生息状況や環境条件を明らかにして、生物保全のためのより良い施設整備のあり方について検討を行います。
既に生息環境に配慮した水路整備を行ったところ等においてモニタリングを行い、生物再生状況の追跡を行います。
地域の方々が実施する生態系保全や環境保全、環境教育等の地域活動などとの連携をさらに進めます。
 
▲目次
 
○本調査結果に関する問い合わせ先
 農林水産省 農村振興局 土地改良企画課 計画調整室 水資源開発班
課長補佐 高橋 修一  (内線4715)
係   長 廣岡 由香利(内線4711)
代表 TEL 03-3502-8111
直通 TEL 03-3501-3749
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社団法人 農村環境整備センター